僕がツィッギーだった頃

魚は頭から腐る。靴下は踵から穴開く。

劉繇奮戦記14「前門の王朗、後門の孫策」

196年12月下旬、会稽侵攻を直前に控え、丹陽陣の士気は上がっていた。


劉繇「みなの者、準備は良いか!これより会稽に攻め込むぞ!」


太史慈・紀庶「おう!」


劉繇「華歆を参謀として、私が3万の兵を率いて井闌の陣形でまっすぐ会稽目指す!
   太史慈、紀庶、朱桓は副将としてついてまいれ!
   華歆は城に篭る王朗軍を混乱させることに努め、そのほかの者は全員
   兵法「連射」を狙っていけ!張英と笮融は王朗軍が打って出たときに備えて
   1万の兵と共に救援体勢を維持して待機だ!」


張英「お待ちください殿!」


劉繇「なんだ張英。華歆が夜も寝ずに考えて立案し、睡眠たっぷりの私がハンコ一つで了承した
   この作戦に意義があるのか?」


張英「ありますとも!なぜ劉繇軍屈指の勇将である私が、近所にコンビニもない
   こんなヘンピな陣で待機していなければいけないのですか!」


劉繇「そうか。不満か。」


張英「不満も何も、こんな大事な作戦に私を用いないなんて、どうかしていますよ!
   なんと言われましても私は城攻めに参加させてもらいますぞ!」


劉繇「そっかー。でも朱桓は井闌に必要だからなー。じゃあ、太史慈か紀庶とタイマンで勝負して
   勝てたら代わりに連れてってやるよ。」


張英「行ってらっしゃいませ!」


劉繇「うむ。私の部下には聞き分けの良い奴が多くて助かるよ。」


太史慈「え?タイマンしないのですか?」


張英「絶対しませんって!なに筋肉をパンプアップさせてるんですか!ロボなのに!」


紀庶「え?じゃあ私とタイマンですか?プシュー。」


張英「しないって言ってるじゃん!関節という関節から「やる気マンマン」みたいな
   蒸気をプシューってさせないでよ!ロボだからって!」


劉繇「はっはっは。じゃあ話も丸く収まったところで行ってくるぞ。
   笮融、輜重をちょろまかしてバックレようなんて考えるなよ。」


笮融「ギクゥ!い、行ってらっしゃいませ!」


劉繇「よーし出陣じゃあ!」



そんなわけで、ベストメンバーを組んで2万5千の王朗軍が待ち構える会稽へ
意気揚々と侵攻した劉繇。これから大変なことになるとも知らずに…。



朱桓「殿、王朗軍が討って出てくる気配もないですし、このままいけば順調に
   会稽までたどり着けそうですな。」


劉繇「うむ、井闌は移動が遅い上に敵部隊の攻撃には脆いからちょっと心配していたが
   今回は大丈夫そうだな。城にたどり着いてしまえば守兵への攻撃力の高さを活かして
   有利に戦いを進められる。いや、オマエが我が軍に加わってくれて本当に助かったぞ。」


朱桓「いえ、私こそまだに劉繇様の配下となって日も浅いのに重く用いていただいて
   感謝しています。ただ…。」


劉繇「ただ?」


朱桓太史慈殿や紀庶殿それに華歆殿など、我が軍の1軍メンバーが会稽を攻めている間に
   袁術孫策が阜陵港および秣陵に攻め込んで来るのではと若干危惧しています。」


劉繇「う…。そう言われると心配になってきた…。軍師!どうなのその辺。」


華歆「…私は作戦を提案したときにちゃんと指摘したじゃないですか…。
   それを殿が「大丈夫へっちゃらだって」ぐらいの言い方で私の説明もろくに聞かずに
   ハンコをポンと押して「それじゃあいってみよ!」って…クニちゃん張りに…。
   どうせ殿は私の意見なんていつもどんなときも適当に聞いていらっしゃるから…。」


劉繇「(やべぇ、今日はなんかネガティブな人だ)そ、そうだったね確かにそうだった!
   いや僕も適当に聞いていたようでバッチリ聞いてたよ!大丈夫大丈夫!
   袁術孫策も他の勢力と争ってる最中だから大丈夫だって!」


華歆「どうだか…。ブツブツ…。」



秣陵。



趙譚「周繒さん!俺の意見も聞いてくださいよ!」


周繒「ん?どうしたの新人の趙譚君。」


趙譚「もっと阜陵港の守りを厚くしておいた方がいいって言ってるじゃないっすか!
   殿はともかく太史慈殿や華歆殿がいない今、敵に襲われたらヤバイっすよ!」


周繒「うーん、確かに殿はともかく華歆殿達がいないとちょっと心細いね。
   陳蘭と陳横なんて上司がいないのを良い事に昼間から広間のテレビで
   エロビデオばっか観てるからね。親が旅行で家にいない男子中学生かっての。」


陳蘭「周繒殿!周繒殿ー!」


周繒「なんですか陳蘭殿。陳横殿がゴリゴリのサドだと知って驚いたんですか?
   昔からあの人は手のつけられないサドですからそんなに引かないであげてください。」


陳蘭「違います!私も女性の体に一番似合う服は「荒縄」、一番似合うアクセサリーは
   「溶けた蝋」だと信じて疑わないゴリッゴリのサドですから全然驚きません!
   むしろ意気投合してお互いのお気に入りを交換っこしたりしてました!
   そんなことじゃなくて大変です!どうやら孫策軍が阜陵港に攻めてきたようです!」


趙譚「やっぱりこの隙を狙ってきやがったか!」


周繒「落ち着け趙譚!こんな時こそ慌てずに対処して事に望むのだ!陳蘭殿!
   敵の規模とそれを率いる将は?」


陳蘭「敵は2万!それを孫策自らが率いているようです!しかも陳武と程普と呂岱も一緒です!」


周繒「アワワワワーどうしよう趙譚〜。孫策自ら来ちゃったよ〜ガチガチガチ。」


趙譚「しっかりしてくださいよ周繒さん!陳蘭さんは至急丹陽陣に救援を求めて!
   あと陳横さんには阜陵港の兵を秣陵に引き上げさせるように伝えてよ!
   俺は兵をまとめておくから!」


周繒「趙譚…君って頼もしいのね…。パズーみたい。」



そんな秣陵の急変を知らず、劉繇達はいよいよ会稽にたどり着き、総攻撃を仕掛けていた。



劉繇「おりゃー!井闌の恐ろしさを教えてやれー!」


王朗「こりゃー劉繇!何しに来たー!」


劉繇「そこにいるのは王朗か!見ての通りよ!オマエじゃ統治しきれない会稽を
   私が貰いに来てやったのよ!おとなしく降参せい!」


王朗「すざけんなよこの侵略者!今までうまく治まってたんだよ!」


劉繇「ただ引き篭もってただけじゃねーか!文弱のオマエは私のもとで内政でもやってろ!」


王朗「会稽には会稽の苦労があるんだよ!オマエじゃ絶対治められねーよ!」


劉繇「言わせておけばー。おい!連射であのヒゲオヤジを射落とせ!」


朱桓「なかなか兵法が発動しませんな…。」


華歆「敵の領地だからなかなか兵法が出ないのは当然じゃないか…ブツブツ。
   今までは自分の領地近くの防衛戦ばっかりだったから良かったけど…。
   世の中そんなにいつもいつもうまくいくと思ったら…ブツブツ。」


劉繇「もうちょっと景気良くいこうよ…。(華歆の「混乱」は期待できそうにないな…)」


華歆「だいたい僕は戦争なんて嫌いなんだ…。人間の愚かさの骨頂だよ…。
   僕はただ天空界にいる菩薩様の膝の上で揺られていたいだけなのに…。」


劉繇「(ネガティブなだけじゃない!なんか厄介なキャラ混じってる!)」


華歆「もういやだ!こんなことはもうたくさんだ!きっと菩薩様もお怒りだよ!
   天罰が下るぞ!菩薩様の兵法「皆殺しファイヤー」が発動するぞ!」


王朗軍兵士「おい、なんか敵はすごい兵法を出すらしいぞ。ザワザワ。」


王朗軍兵士「やべえよ。血走った目で皆殺しとか言ってるぜ。ザワザワ。」


劉繇「おおっ!敵が混乱したぞ!今だロボ!」


太史慈・紀庶「連射ー!」


王朗「ぐわーヤバイ!早く兵を立て直せ!許貢!虞翻はどうした!」


許貢「会稽は不吉な雲気が満ちているとか言って章安港に篭りっぱなしですが…。」


王朗「あいつめー!チクショウどうにかしろー!」


劉繇「よーしこのまま攻め潰せー!敵に反撃の隙を与えるなー!」


朱桓「殿。」


劉繇「どうした朱桓!ホラお前も連射連射!ホラ!」


朱桓「たった今、孫策が2万の兵で阜陵港に進攻中との情報が入りました。」


劉繇「またまたー、どうせ偽報でしょ?そんなのに騙されるほどこの劉繇
   錆びついてはおらんぞハッハッハ!」


朱桓「私の直属の部下からの情報なので確かです。間違いないです。」


劉繇「………マジ?」


朱桓「マジ。」


劉繇「はわわわわー!軍師!どうしよう軍師!孫策が来ちゃったよ〜!」


華歆「そんなこと私に言われても…。きっともう今頃阜陵港は敵の手に落ちて皆殺しに…。」


劉繇「うわー!使いものになんねー!朱桓たすけーてー!」


朱桓「華歆殿、これをお飲みください。」


華歆「なんだよ、お酒なんかで僕の機嫌を取ろうったってそうはいくもんか…。
   もう大人たちには騙されないぞ…。」


朱桓「これはただの酒ではありません。菩薩様から華歆殿に渡すようにと授かった
   お神酒でございます。これを飲めば天空界に行けるとか行けないとか。」


華歆「ぼ、菩薩様が!菩薩様が僕に!?飲むさ!飲むよ!そーれグビグビグビ!
   ヒック。むむむむむ!一大事で御座いますな!早急に丹陽の張英殿に
   救援に向かってもらいましょう!」


劉繇「おお!朱桓ナイス!」


朱桓「それでは阜陵港は周繒殿と張英殿に任せて、我々は早いところ決着をつけてしまいましょう!」


劉繇「そうだな!あと一息だ!太史慈!一気に攻め立てよ!」


太史慈「おう!」


兵法の発動回数こそ少なかったが、兵の数と陣形を活かして終始戦いを有利に運んだために
会稽の戦局は決しようとしていた。しかし、孫策軍の侵攻によって始めて二面作戦を
展開しなければならなくなった劉繇軍。予断を許さない状態が続くことになるが、
この後さらに厳しい試練が待ち受けていることには、華歆も朱桓も気がついていなかった。


周繒「やべーよ孫策怖いよ〜。小覇王怖いよ〜。」


もちろんこいつが気がつくはずもなかった。

(続く)