僕がツィッギーだった頃

魚は頭から腐る。靴下は踵から穴開く。

劉繇奮戦記8「横山光輝万歳の巻」

195年3月。
阜陵港の孫策軍を蹴散らした劉繇のところに
今度は袁術軍が攻め寄せてくる。紀霊隊の1万5千に袁胤隊の1万。


劉繇袁術の野郎調子こきやがって!また返り討ちにしてくれるわ!」


周繒「またこの港に敵を引き入れるんですか?」


劉繇「その通り!さっそく兵を秣陵に戻すぞ!」


周繒「動かすことのできない負傷兵がまだ5千人ぐらいいるんですけど…。」


劉繇「何!?そうかそれはしょうがないな。負傷兵には「頑張れ」と伝えておけ。
   よし、それじゃあ動けるものだけで帰るぞ!」


周繒「鬼かよ。」


劉繇「だってしょうがないじゃん!もう敵はすぐそこまで来てるんだからさ!」


華歆「待つでがんす!この港を出てはいけないでがんす!」


劉繇「お、どこの酔いどれ親父かと思えば華歆ではないか。今回の作戦に異論があるのか?」


華歆「異論どころじゃないでがんすよ〜。港を出たらヤバイでがんすよ。
   殿が兵を秣陵に戻せば、残された負傷兵は全て袁術軍に吸収されてしまいうでがんす。
   紀霊隊と袁胤隊が港に入れば、負傷兵と合わせて3万を超えるでがんす。
   いくら殿でも3万の兵が相手では苦戦がんすは必死でがんす!」


劉繇「それはヤバイ!危険極まりない!やめやめやめ、戻るのやめ!
   負傷兵は一生懸命治療してやれ!彼等はどこまでも我々の仲間だ!」


周繒「最低だよあんた。」


劉繇「何とでも言え。それで軍師、敵を退けるのはどうしたらいい?」


華歆「こうなったら船で迎え撃つしかありませんな。がんす。」


劉繇「え?水戦やるの?マジで?それってちょっと危なくないか?
   だって下が川なんだぜ?落ちたら溺れちゃうんだぜ実際の話。」


周繒「うーん。コイツの臆病ぶりには心底虫唾が走りますが、
   実際我々には水戦の経験はないですからね…。」


華歆「大丈夫でがんす。敵は前回も戦った紀霊と、袁術の甥の袁胤でがんす。
   紀霊も紀霊隊の副将の陳蘭・雷薄・劉勳も水戦は得意でないでがんすし
   袁胤なんて副将も連れずに何しに来た?って感じでがんす。」


劉繇「しかし、いくら武将がボンクラでも2万5千という戦力は侮れんぞ。」


華歆「そこもご心配には及ばないでがんす!敵はあくまで1万5千と1万であって
   2万5千ではないでがんす!つまり紀霊隊と袁胤隊を引き離し
   個別撃破すればいいんでがんす!」


劉繇「そうか!さすが我が軍師!」


華歆「それでは私はさっそく袁胤隊に「偽報」を仕掛けて、
   足並みを乱してくるでがんす!では!」


劉繇「う〜ん、性格はアレだけど、頼りになるなぁ。」


周繒「あの人がいなかったら今頃我々は滅びているんでしょうな…。」


劉繇「ね…。」


太史慈「殿!」


劉繇「ひぃ!お、なんだ太史慈ではないか。バーサーカーモードはもう解けたのか?」


太史慈「それが、とある兵卒がそれがしを押さえ込み、働き者スイッチを解除してくれたのです。」


周繒「働き者スイッチってうか皆殺しスイッチですけどね…。」


劉繇「それはともかく、オマエを押さえ込むとはその兵卒は只者ではないな。」


太史慈「は。それがしもそう思い、連れてまいりました。」


紀庶「どうも。紀庶(きしょ)と申します。」


劉繇「おお!太史慈ロボにも勝るとも劣らない迫力!とても人間とは思えんな!」


張英「あの…実は…。」


劉繇「どうした張英?」


張英「太史慈殿はああ言っていますが、実は太史慈殿のバーサーク状態を止めるとき、
   兵士百人がかりで押さえ込んだところ…。」


劉繇「ところ?」


張英「勢いあまって太史慈殿を壊しちゃったんですよ…。」


劉繇「何ー!?しかし太史慈はここにいるではないか。」


張英「はい。何とかみんなで組み立てたら直りました…。」


劉繇「それじゃ問題ないじゃないか。それとこの紀庶と何か関係があるのか?」


張英「実は、みんなで組み立てていたところ、気がついたらロボが二体になっていまして、
   それが紀庶です。たぶんその辺に転がっていた材木とか鎧とかも部品として
   組み込んでしまったせいだと思います。太史慈殿の記憶があいまいなので
   助かりましたけど。」


劉繇「マジかよ!それでちゃんと動いてるのかよ!」


張英「ええ、バッチリ動いています。まったく問題ナシです。」


劉繇「じゃいいや。むしろロボが増えてラッキー!よし太史慈よ、
   紀庶はオマエが責任を持って一人前の武将にカスタマイズせよ!」


太史慈「心得たり!」


紀庶「太史慈様よろしくお願いします。」


こうして、袁術軍への対応策も決まり、
一人目の抜擢武将の教育も太史慈の手によって始まった。


そして場所は変わって長江を渡らんとする袁胤隊の船上。


袁胤「そろそろ秣陵が見えてくるかな?あーあ、戦なんていやだなー。
   僕はどっちかっていうと頭脳労働派なんだよねー。ちょっと船酔いしちゃったし。
   はぁー、紀霊隊の連中は張り切っちゃってやだねー。
   基本的にあいつらとは思想が合わないんだよね。野蛮だし。臭いし。
   早く街に帰って蹴鞠がしたいなぁ。叔父さんもなんで僕に戦なんてさせるかなぁ。」


華歆「ざばぁーーん!!ベロベロバー!」


袁胤「ギャー!ぎゃー!河童だー!出たー!誰かー!」


華歆「ご安心くだされ袁胤殿!私は袁術殿からの急報を伝えに来た
   バイク便の者です!長江はバイクでは走れないのでバサロできました!」


袁胤「な、なんだぁー、ビビらせないでよもー。それで急報って何?」


華歆「袁術様からの伝言で、おいしいカステラをお隣さんにもらったから
   一緒に食べましょう。との事です!」


袁胤「何!カステラ!食べるに決まってるよ!よーし面舵いっぱーい!」


華歆「それでは私はこれから洛陽に午後の会議で使う資料を届けなければいけないので
   失礼いたします!」


袁胤「ご苦労様ー。バイク便って大変だね〜。事故に気をつけてね〜。」


一方、紀霊隊は。


紀霊「そろそろ阜陵港だな。どうせまた港に入るまで手を出してこないだろうから
   暇でしょうがないな。」


陳蘭「紀霊殿!袁胤様の船隊が引き返していきますぞ!」


紀霊「は?何考えてんのアイツ。」


雷薄「きっとビビって帰ったに決まってますよ。あのヘナチン。」


紀霊「ガハハ!オマエそれは言い過ぎだって!仮にも殿の甥っ子だぞ!」


雷薄「ブハハ!紀霊殿だっていつも言ってるじゃないすか!アイツは腰抜けだって。」


紀霊「それは本当のことだからいいんだよ!ガハハハハハ!」


劉勳「あの…。」


陳蘭「あ、劉勳殿もそう思います?アイツ大して頭も良くないくせに
   頭脳派気取ってやがるとか思ってるんじゃないですか?」


紀霊「それはオマエが思ってるんだろ!ぶひゃひゃひゃひゃ!」


陳蘭「そんなことないっすよー。「ウスラバカ」ぐらいですよー。」


紀・陳・雷「うひゃひゃひゃひゃひゃ!」


劉勳「あの、大爆笑のところ申し訳ありませんが、対岸から劉繇軍らしき船団が
   向かってきますが…。」


雷薄「なぬー!」


紀霊「港に入るまで攻めてこないって言ったの誰だよ!」


陳蘭「紀霊殿です!」


紀霊隊と袁胤隊の切り離しは見事に成功した。
そして先行する形になった紀霊隊に対し阜陵港から劉繇太史慈・張英の
2万5千が打って出る。


太史慈「敵も楼船だ!矢に気をつけろ!」


張英「袁胤隊が引き返してくる前に勝負をつけるぞ!」


劉繇「船の上ならワシでも兵法が使えるぞ!それ矢嵐!」


兵の数で勝る分だけ戦いは序盤から優勢だったが、
港に残っていた周繒の「錯乱」が成功してからは一方的になる。


紀霊「ま、また負けた〜!逃げろ〜!」


劉勳「ああ!また真っ先に逃げ出して!待って〜!」


袁胤「あれー?そこにいるのは紀霊殿と劉勳殿ではないですか。
   なんで丸太にしがみついてバタ足してるの?」


紀霊「うるせー!オマエ今までどこに行ってたんだよ!」


袁胤「いや、カステラを食べられると思ったんだけどそれはデマゴギーだったみたいだから
   こうして追いついてきたんだけど…。敵はどこ?」


劉勳「後ろです。」


袁胤「い、いやー!」


紀霊隊と戦っている隙に秣陵に残っていた笮融と陳横が、
秣陵に残っていた1万5千あまりの兵を引き連れて阜陵港に入り
すぐさま華歆と一緒に袁胤隊に襲い掛かる。
華歆が混乱を成功させ、走舸の1万に対し蒙衝の2万で散々に打ちのめす。


陳横「おらおらー!大将出てこいやー!いつもみんな俺のことバカにしやがって!
   チクショウ!チクショウー!」


笮融「ち、陳横殿が狂った…。強い…。」


このようにして、
どこにあったのか不思議になるような力と知恵と団結力を駆使して、
劉繇袁術軍2万5千を退けることに成功したのだった。

(続く)