僕がツィッギーだった頃

魚は頭から腐る。靴下は踵から穴開く。

劉繇奮戦記3「華独座の怪人」

194年6月。
人材不足に悩む劉繇であったが、華歆という逸材がいるとの情報を聞きつけ
自ら寿春にまで赴き、かの人物との接触を図ったのだった。


劉繇「暑い…。蜜水が飲みたい…。蜜水がないならポカリでいい…。
   えっーと、周繒にプリントアウトしてもらった地図によると
   華歆の住んでいるアパートはたぶんこの辺なんだけどなー。
   袁術領だからあんまりウロウロしてると首チョンパされちゃうよ。
   えーっと目印のJA寿春がココだからー。ココを曲がってー。
   しかし目印が農協ってどんな田舎だよ…。ダーツの旅かっての。
   あーここだここだ。コーポ淮南荘。」


ピンポーン。


華歆「どちら様ですか?」


劉繇「あ、自分は劉繇正礼という者なんですけど、登用に参りました。」


華歆「え?秣陵の劉繇様がわざわざ私などを?それは恐縮です。
   何のもてなしもできませんがどうぞお上がりください。」


劉繇「(なんだ、顔はいかついけど案外いい人そうじゃないか。)」


華歆「いやーお恥ずかしい話なのですが、酒の飲みすぎで金が底をついてしまい、
   改めて仕官先を探そうとハローワークにも行ってみたんですけれど、
   なんせこの不景気でしょ?私は手に職をつけてるわけでもないし
   資格らしい資格といえば、禅譲技師2級と「カーテンの陰から
   オバサンを引きずり出す免許」の二種ぐらいなものですから、
   今日もこうしてワンカップで憂さを晴らしていたところなんですよ。ヒック。」


劉繇「(しめしめ、案外登用は簡単そうだな。生活に困ってるみたいだし。)」


華歆「劉繇殿!今それがしのことを心中で軽んじましたな!」


劉繇「へ?あ、いえ、滅相もございません!」


華歆「銭や錦でこの華歆が動かされると思ったら大間違いですぞ!ヒック。」


劉繇「誤解でございます!私は華歆殿の龍の如きお志に感銘を受け、
   ぜひ教えを請いたいと望むだけでございます!」


華歆「ま、そういう堅くるしいのは抜きにして、劉繇様のために働かせてもらいますよ。」


劉繇「へ?は、はぁ…。」


華歆「あ、混乱させてしまって申し訳ありません。実は私、シャックリをすると
   多少人格が変わってしまうんですよ。はははは。」


劉繇「………。スイマセンちょっと電話させてもらっていいですか?」


プルルルルルプルルルルル


周繒「もしもし、どうしたんすか?寿春にはもう着きました?」


劉繇「いや、今華歆の家にいるんだけどさ、けっこうヤバイ奴っぽいんだよねー。」


周繒「え?マジですか?どんな感じなんすか?」


劉繇「いやなんかランチさんみてーで超おっかないんだけど…。」


周繒「二重人格って奴ですか?それぐら別にいいいじゃないですか。」


華歆「ヒック。むむ!それがしの悪口を言っているでござるな!ヒック。
   いつも私ばっかり悪いみたいに言って!どういうつもりなのよ!ヒック。
   ブヘヘ、坊っちゃん、おじさんと森へ行かないか?そしてポルカを踊ろうブヘヘ。
   ヒック。そそそそ空が!空が怒ってるよ!きっと宇宙皇帝が盲腸なんだ!
   僕のプリングルス食べたの誰さ!ヒック。いっぱいあるから来てみろリン☆」


劉繇「二重じゃないみたい。いっぱいいるみたいだよ。超やベーよ。
   今俺の真横で悩ましげな仕草をしながらタバコの煙を吐きかけてきてるよ。
   こんなんだから袁術も助言を聞き入れなかったんだよ絶対。」


周繒「(めんどくせーな…)あー、スイマセンちょっと電波が電波が。」


ツーツーツーツー。


劉繇「あの野郎…!」


華歆「ヒック。それでは劉繇様、さっそく秣陵にまいりましょう!
   不肖この華歆、犬馬の労も厭いませんぞ!」


劉繇「は、はい…。」


こうしてめでたく華歆の一発登用に成功した劉繇は、
秣陵へ帰り、改めて覇業への方策を練ることとなった。