僕がツィッギーだった頃

魚は頭から腐る。靴下は踵から穴開く。

首が取れる前日の日記

うなだれて歩いていた。僕はうつむいたまま、今にも泣き出しそうな顔で歩いてきた。胸を張って歩くなんてとてもできなかった。僕は痛みに耐えるように、ただ下を向いて生きていた。なんでって首を寝違えていたから。

はい。オッサンが寝違えた話をします。寝違えた。背筋と首筋を真っすぐ伸ばすことができない痛いから。上も向けない。ウガイをするような体勢が無理。左右も45度くらいしか回らない。寝違えた。寝違えたかどうかの確証は得ていないけど寝違えた。ということにしたい。この歳になるとそれ以外のもっと深刻なヤツなんじゃないかという不安が頭をよぎるので。神経がどうかなっちゃってとか。呪いとか。マジかよ呪い怖えーよ。大きなムカデが俺の首に絡みついているんじゃないのか。オババにしか見えないムカデが。「そのムカデを落とすにはこのお札が必要じゃ!今なら39万9000円じゃ!お札を使わないと死ぬ!ローンもオッケーじゃ!」ババアさては俺を騙そうとしてやがるな!

いやしかし難儀してます。車の運転が大変。目視大変。左右確認するたびにアヒーアヒー言ってましたよ。ドSのお姉さんが同乗してたらさぞ満足していただけたことでしょうに。ただ日本人は肉体的な痛みをあまり重視しないですからね。SMにおいて。精神的な責めに重きを置きますから。スパンキングひとつとっても、直接的な痛みを追及する欧米に対し、スパンキングする側とされる側の関係性にハフハフできる日本人というように、一見同じ行為のように見えてそこに求めているものが大きく違うという。ですから昨日私が女王様の言いつけどおり廃カーペットに潜り込んで「僕は寿司のシャリです!夕方のニュースで紹介される節操のないデカネタ寿司のシャリです!もはやあってもなくてもどうでもいいヤツです!デカアナゴをちょっと持ち上げてるだけの存在です!ああ!僕のアナゴから煮きりが!煮きりが出ちゃう!」

と、ひとしきり楽しんだのち首を変な方に曲げたまま廃カーペットの下でスヤスヤ眠ってしまいましたとさ。なんで寝違えたのかいまだ不明です。